キリスト受難のリング
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キリスト受難のリング

作品名 キリスト受難のリング
制作年 1620年頃
制作国 フランスまたはスペイン(推)
制作者 未詳
素材 アイボリー、エナメル、ゴールド、

作品説明

ゴールド・リングのフープはショルダーで幅を広げ、ガラス板の下にアイヴォリー彫刻によるキリストの磔刑像のタブローを収めたオーヴァル・ベゼルを支えている。ショルダーとベゼルの両サイド、裏側はブラック・エナメルでシンメトリーな装飾1483-1546が施されている。

解説

16世紀のヨーロッパは、マルティン・ルター()が提起した宗教改革によって引き起こされた宗教摩擦によって引き裂かれていた。ローマにいる教皇への忠誠を保持する人々がロザリオや諸聖人の肖像、帰依を表すその他の図像を顕示し続ける一方、プロテスタントたちはクロスを例外としてそれらを拒否する傾向にあった。教会での公共礼拝のために描かれたり大理石に彫刻されたりした宗教芸術の偉大な記念碑の個人的なヴァージョンとしてのミニチュアであり、それゆえにこのリングはローマン・カトリックの信者によって信仰の明白な表明として着用された可能性が最も高い。精緻に彫刻されたアイヴォリーによるキリスト磔刑のシーンがベゼルの小さなスペースに凝縮されているが、それにはセンターのキリストの像だけでなく、両脇の十字架に吊るされた二人の盗人および彼らを取り巻くその他の人々、さらには前景に目立たせた騎乗の人物、一人はターバンを、もう一人は甲冑を身に着けた二人が描かれている。その後者はローマ軍の百人隊長を現しており、彼はエルサレム総督のポンティウス・ピラトに命じられてこの磔刑を指揮するが、その経験を通じて改宗させられ「真にこのお方こそ神の子にあらせられる」(マタイによる福音書27、v54)と叫ぶ。ターバンを着けた騎乗の人物は、アリマタヤのヨゼフということも考えられる。裕福なキリストの信者であった彼は、墓に埋葬するため遺体を十字架から降ろすことを許された。このリングの見事なプロポーションと描かれたシーンの荘重さを強調する落ち着いたブラック・エナメル、アイヴォリー彫刻の精緻さが結び付いて、これをルネサンスの宗教芸術の今日に残る注目すべき逸品としている。

ダイアナ・スカリスブリック