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ダイヤモンド 塔のブローチ

作品名 ダイヤモンド 塔のブローチ
制作年 1925年頃
制作国 未詳
制作者 未詳
素材 プラチナ、ダイヤモンド

作品説明

非常に美しいアール・デコのダイヤモンドをセットしたプラチナのブローチは、オリエントのインスピレーションによる六角の「パゴダ」(=仏塔)風の望楼としてデザインされており、中心に配した尖頭を支える、様式化されたテント型の屋根が付き、手すり付の外回廊を伴うパビリオンの解放壁面へと突き出たスワッグから鈴が吊り下げられている。様々なカットのダイヤモンドが全面にセットされている。

解説

第一次世界大戦による背後の恐怖によって、ジェントリー(貴族に次ぐ階層)階級は平和と繁栄の新しい時代の到来を祝いたいと、またともすれば装飾過剰な伝統的な19世紀のデザインからの脱却によってそれを記念したいと願った。
そこでジュエラーたちはこの欲求を反映するための新しいモティーフを求めて、エキゾティックな東洋、特にペルシャと中国からのインスピレーションを探した。商業的な競争の導入により、これらの目的地への旅は、少数の特権階級に限られてはいたが、かつてなく用意かつ迅速なものとなっていた。
中国において遠い昔から建てられてきた木造の孤立した建造物のパゴダは、隋および唐王朝の時代にあっては元来が方形の土台の上に置かれていたが、時代が進むにつれて六角や八角の土台となった。この素晴らしい実例は宋王朝(960-1279)期の977年に建立された龍華寺パゴダに基づくものと思われるが、後世に追加された非常に装飾的な増築物は20世紀初期のジュエラーたちにアピールしたに違いない。19世紀の全時代を通じて、全てが揚子江沿岸に位置した交易所へのアクセスの良さにより、上海の周囲には大きなヨーロッパ人のコミュニティが形成されたことから、極東への旅行者たちに対して磁石として機能した。かくしてこのパゴダは、貴族階級の全ての女性たちの間でよく知られた上海の装飾的なシンボルとなった。彼女たちはこのブローチをジャケットの襟やドレスのショルダーにピンで留めて、上海通であるという誇りを持って着用した。
望楼は孤立して建つデコラティブなパビリオン構造物で、小型の築山の上に設えられていたようであるが、19世紀と20世紀に広大なヨーロッパの邸宅の樹林地帯や庭園に所有者の裕福さを誇示する例として建造された。望楼には二重の機能があり、散策の目的地としてかつまたアフタヌーンティーを飲むための恰好な集合場所ともなり、かくして雨宿りや日よけのシェルターを提供するとう実用的な施設でもあった。
例えば母屋からの眺望で地平に見える装飾的なアイキャッチャーというにとどまらなかったのである。
このブローチの並外れた品質はデザインの繊細さと、プラチナの使用によってわかる非常に高度な技についてだけでなく、ダイヤモンドの様々なカットの選択においても示されている。
望楼の柱と外側の回廊の手すりへのより高価なバゲットカットの使用は、その直線的な構造形式を強調するとともにテント型の屋根のサーキュラーカットのダイヤモンドとのコントラストを生んでいる。

ダイアナ スカリスブリック