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トンボのブローチ

作品名 トンボのブローチ
制作年 1895年頃
制作国 フランス
制作者 ブシュロン
素材 ゴールド、エナメル、ダイヤモンド、プラチナ

作品説明

フランスのアール・ヌーヴォースタイルの、ダイヤモンドとプリカジュールエナメルによるトンボのブローチは、恐らくエドガー・ヴァンスがブシュロンのために製作したものと思われる。ブルーからグリーンへとカラーをグラデュエーションさせたプリカジュールエナメルによる、広げた翅の間の、ダイヤモンドをセットしたテーパー状の胴部を伴うトンボは、ゴールドをチェイシングした四肢の上にダイヤモンドのディテールが施され、眼にはダイヤモンド、頭部にはグリーンエナメルが施されている。ロジンジ型の商標とフランスの刻印があり、パリのヴァンドーム26番地のブシュロンによる、当時の専用ケースに収められている。

解説

エドガー・ヴァンスは、プリカジュールとして知られる「ステンドグラスウィンドウ」のマスターであった。であればこそ、巧みに色をグラデュエーションさせた透明の繊細な翅の生えたトンボの製作を請け負ったのが彼であると容易に理解できる。彼の主要な顧客は、ラクロシュやここにあるようなブシュロンといった主流のジュエリーメゾンであった。ブシュロンのアーカイブは、20世紀への変わり目の、アール・ヌーヴォーの影響の大きさを立証するものである。
このムーブメントの主導者であるルネ・ラリック(1860-1945)との関連は、プリカジュールの技法だけでなくトンボのモティーフにもみられる。なぜならば、アール・ヌーヴォーはジャポニスムに紀元を持ち、その日本は「トンボの故郷」として知られていたからであり、この昆虫は常にヴァンスのような、ラリックの後を追ったアーティストたちの表現手段の一部であったからである。このブローチのフィッティングは着脱式になっており、したがって盛大なイヴニングソワレ(夜会パーティ)では髪に着用するべくピンのフィッティングに代えることができた。そうした夜会でこれを身に着けた女性は、動きにつれて光を捉えるダイヤモンドの煌めきで人々の視線を集めたであろう。

ダイアナ スカリスブリック