close close
/home/vuser/5/4/0005745/www.albionart.com/wp/wp-content/themes/original-theme/single-jewel.php on line 25
">

ロシア大帝エカテリーナ2世のエメラルド(18世紀中期)
-ランデル、ブリッジ・アンド・ランデルによるセッティング(1830年頃)-

作品名 エメラルド ダイヤモンド ネックレス、イヤリング
制作年 1830年頃
制作国 イギリス
制作者 ランデル、ブリッジ・アンド・ランデル
素材 ゴールド、シルバー、エメラルド、ダイヤモンド

作品説明

ダイヤモンドとエメラルドのネックレスに加え、マッチしたイヤリングから成るセット。
ネックレスは12石のステップカットエメラルドをグラデュエーションセッティングで構成し、各エメラルドは透かし細工を施したゴールドの持ち上がったコレットにセットされ、交互に配されたシルバーコレットにセットされた14石のクッションシェイプダイヤモンドからは14石のペアシェイプエメラルドがフリンジ状に提げられている。センターに下がる着脱式のペンダントには、八角形のドーム状にカットされたエメラルドが12石のクッションシェイプダイヤモンドの縁飾りの中に収められ、それからさらに1石のエメラルドのドロップが提げられ、1石のエメラルドのクラスプで留められるようになっている。イヤリングはどちらもブリオレットカットエメラルド1石を同じくオープンワークのダイヤモンドの縁飾りで囲んで作られている。

解説

ロティアン侯爵の一族の各世代は、これらのエメラルドの大半はその祖先であるバッキンガムシャー伯爵が1762-65年にサンクト・ペテルブルグで大使職の任にあった間に、エカテリーナ2世女帝から賜ったものであると信じてきた。彼はハンサムで、女帝はそうした美形の男性たちに対して特別情にもろかった。意のままにできるロシア帝国の巨万の富を用いて、彼女は個人としても女帝としても身近におきたいと望む人々に対して高価なギフトを与える立場にあった。ゴールドの小箱とジュエリーが彼女の通例の褒賞であったが、バッキンガムシャー卿だけがそのように贔屓されたイギリス外交官というわけではなかった。たとえば1770年、女帝はキャスカート卿夫妻に壮麗なダイヤモンドのエイグレットを贈ったが、それは彼らがフランスのルイ15世から贈られた同じような品物の2倍の価値があると見積もられたものである。
キャスカート卿はロンドンへ戻るやいなやその女帝からのエイグレットを売却したのに対して、バッキンガムシャー伯爵は女帝から贈られたエメラルドを自分の相続人たちのために維持した。かくして本稿のネックレスは、彼の未亡人の死後、娘のアメリアの死後に起草された双方の財産目録に記載されている。

アメリアの夫、キャッスルレイ子爵(のちのロンドンデリー侯爵)は外務大臣であったことから、彼女は頻繁に公の目にさらされる生活を送り、またそれゆえにこれらのエメラルドのネックレスをイギリスやヨーロッパの宮廷のあらゆる社交の席で着用したに違いない。ウェリントン公爵を昇進させることによって、ナポレオンの失脚に大いに貢献した人物としてキャッスルレイ子爵はヨーロッパの君主たちからも感謝の印のダイヤモンドなど高価な贈物を受け、それらを妻のコレクションに追加した。彼はまた妻のためのジュエリーに自らも金を費やしたが、中にはウィーン会議中に購入したエメラルドとダイヤモンドの1点も含まれていた。
子供に恵まれなかったために、アメリアのエメラルドとダイヤモンドはやがて全てが彼女の妹の息子、ロティアン侯爵へと引き継がれた。彼がそれらをこの見事なスイートにセッティングし直させたのだが、恐らく1831年のウィリアム4世の戴冠式に合わせたものであった。宮廷ジュエラーのランデル、ブリッジ・アンド・ランデルの手に成ると思われるこのスイートは、第一帝政期にボナパルト一族の女性たちのために創られたグランドコートスタイルであり、深いヴェルヴェットのようなグリーンのエメラルドと様々なシェイプ、サイズに煌めくダイヤモンドをコントラストさせた調和のとれたデザインである。その荘厳な美しさは、ナポレオン敗北後に続いた英国史の中で最も輝かしい時代のイギリス貴族階級の富と権勢を反映している。このようなネックレスは、ナポレオン時代およびその後の200年間を通じて、重要な公式行事の席において装われたローカットのドレス用にデザインされたものである。戴冠式や公式訪問、宮廷舞踏会、国会の開会式において、これらのロティアン・エメラルドはその煌めくカラーと華々しいプロヴナンスの故に常に関心と賞賛を集めてきた。これに関する限り、一族は常にそれについて話してきただけでなく、文書でそれを各章してきた。この資料に添付されている1通のレターは現ロティアン侯爵からのもので、彼および彼の両親、その先祖たちは常に、今やネックレスとなり過去200年余にわたって歴代公爵夫人の首元を飾ってきたエメラルドは、彼らの先祖がエカテリーナ女帝から贈られたものであると明言している。一族は常にこの伝承を誇ってきたのである。
殆ど全ての古来のジュエリーはモダンなスタイルのものにリフォームされるか盗難にあうかなどいるために、このロティアン侯爵のネックレスとイヤリングは先祖伝来のジュエリーの稀少なグループに属するもの、すなわち英国史と王族たちと結びついたプロヴナンスとともに今日まで無傷のまま伝存してきたものである。したがって、これはバックルーチ公爵のコレクションにある女帝マリア・テレジアのブレスレットに、また、ロシアのアレクサンドル皇帝から贈られたロンドンデリー侯爵夫人のアメジストのネックレスに比肩するものである。

ダイアナ スカリスブリック

来歴

第2代バッキンガムシャー伯爵(1723-93)とその未亡人キャロライン(1817年没)から娘のアメリア、キャッスルレイ子爵夫人、のちのロンドンデリー侯爵夫人(1762-1829)へ、次いで彼女の甥の第7代ロティアン侯爵(1794-1844)へ、さらに次いで現在の一族へと世襲されたもの。