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受胎告知の文字Mのジュエリー

作品名 受胎告知の文字Mのジュエリー
制作年 1862年頃
制作国 イタリア
制作者 カステラーニ
素材 エナメル、エメラルド、サファイア、ルビー、パール、ダイヤモンド、ゴールド

作品説明

19世紀中葉のイタリア製のゴールドとエナメル、宝石をセットした受胎告知のジュエリーはアレッサンドロ・カステラーニによるもので、クラウンが冠されたゴシック体の文字M(聖処女マリアを指す)としてデザインされており、センターのフルーロン(建築などに見られる小さな花形装飾)はオーヴァルのカボション・エメラルドがセットされており、その両サイドには2つの小さなカボション・ストーン――ルビーとエメラルド――間にパールが1個ずつ配され、また両端の半フルーロンにはカボション・ルビーが1個セットされている。センターのバーの上にあるのは単一のクリスタルから彫り出された花瓶で、グリーンの葉飾りの痕跡を伴う純潔を示すパールのユリの茎が1本挿されており、3個のパールが冠されてその上に四角い縁に囲まれたカボション・ルビーが配されている。左と右は聖処女マリアと天使ガブリエルの2つの像で、双方ともトレイサリー(装飾狭間)で飾ったニッチ(壁龕)の内側の六角形の台座の上に立っている。彼女はレッドのローブとロイヤル・ブルーのマントを、彼はホワイトのローブとペイル・ブルーのマントを着用しており、その翼も同じようにエナメルが施されている。このシーンは文字Mの外側のラインに囲まれており、フィリグリーでアウトラインが付けられるとともに様々なサイズの盛り上がったオーヴァルのセッティングに収められフィリグリーによってエッジを付けられ区切られた複数のカボション・ルビーとエメラルドそして1個のパープル・サファイアで美しく飾られている。このジュエリーの聖処女側の下のエッジは、彼女の純潔の象徴である2個のパールによって強調されている。背景はフィリグリーのモティーフで装飾されており、ローマのカステラーニの商標を囲む2つのカルトゥーシュがある。

解説

この処女マリアへの受胎告知のドラマティックな表現は、彼女がイエス・キリストの母親になることを伝えるために天使ガブリエルが神から遣わされた時(聖ルカ、1、26-38)のもので、オクスフォードのニュー・カレッジによって所蔵されている有名な“ファウンダーズ・ジュエル“(始祖のジュエリー)に由来するものである。ピーター・ハイルとその妻クリスティナ、息子のトーマスによって1455年に寄贈されたもので、中世から伝存する最も重要なジュエリーのひとつであり、またアレッサンドロ・カステラーニによって足繁くイギリスを訪れたある機会に目にされたものである。古典およびビザンティンのジュエリーのヴァージョンを超えてカステラーニ社のカバー範囲を広げることを熱望して、彼はその折りに1862年にロンドンで開催される万国博覧会のカステラーニのスタンドで展示するために、この中世の“ファウンダーズ・ジュエル”をコピーすることを決断した。この時代は同社にとっての新たな出発を正に象徴するだけに留まらず、ルネサンス・スタイルのジュエリーのためにカステラーニが使用し続けたエナメルの技術についても同様であった。当の中世のオリジナルは留め具としての装置を備えていないものの、そのコピーはヴィクトリアンの所有者によってペンダントやブローチとして使用するためのフィッティング(専用金具)が付いている。このヴァージョンに似たその他のもので、異なった宝石がセットされたものに関しては、ローマのヴィラ・ジュリアの博物館に1点が、プライベート・コレクションにあるものとしてカタログに収録された3点があり、1869年にアウグスト・カステラーニによって製作された5番目(所在不明)は、S. ウェバー・ソロスとS. ウォーカー編『カステラーニとイタリアの考古学ジュエリー』(2004年刊)プレート9-43、チェックリストno. 119に、また奉納の子羊については273ページ、fig. 9-97に掲載されている。

ダイアナ・スカリスブリック