作品名 | ビザンティン 聖母マリア カメオ リング |
制作年 | 1100年頃 |
制作国 | 未詳 |
制作者 | 未詳 |
素材 | ゴールド、アメジスト |
フィリグリーとビーディングを施したゴールドリングの幅の広いフープが支える四角いベゼルには、アメジストによる聖処女マリアの胸像カメオがセットされている。彼女はヴェールを被り、祈りに手を掲げ、ギリシャ文字でMY OY(神の母マリア)と刻まれた銘刻を帯びて、正面を向いている。裏側には、クロスとその縦軸両サイドにギリシャ文字のIC XC(イエスキリスト)が彫り込まれている。
古代芸術である宝石彫刻は、ローマで皇帝の宮廷のために仕事をしていたギリシャ人のアーティストたちによって完璧の域に高められたもので、ローマ帝国滅亡の後に西欧では衰退したが、ビザンティンにおいて存続した。とはいえ、図像表現は変わり、もはや題材は神話や古代史からではなく、キリスト教世界から採られた。一方の面に聖処女マリアを、その裏側に息子イエス・キリストのクロスを表現したこのカメオは、ビザンティンの宝石彫刻師たちがキリスト教への信心においてどのように伝統的な技術を使用したかを如実に物語っている。