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ルネサンス テーブルカット
ダイヤモンドリング

作品名 ルネサンス テーブルカット
ダイヤモンドリング
制作年 1610年頃
制作国 未詳
制作者 未詳
素材 ダイヤモンド、エナメル、ゴールド

作品説明

ゴールド製リング。面取りされたフープは以前に施された白いエナメルの形跡を残している。やはり緑のエナメル跡が残るショルダー部はスクロール(渦巻き状)を成し、フープに支えられた高さのある正方形箱型のベゼルは、半透明の白いエナメル地にゴールドの細かい装飾が施された段状の枠からせり上がり、テーブルカットのダイヤモンドがセットされている。ベゼル裏面にはダークブルーの帯状のエナメル装飾がある。

解説

このリングには16世紀末に起こったジュエリーの様式上の変化が具体的に表されている。すなわち、宝石を主体とするシンプルなデザインが、ルネサンス期のゴールドスミスの技であった鮮やかなエナメルと彫刻的なディテールを持つデザインに取って変わったのである。

この作品ではテーブルカットのダイヤモンドの表面から放たれる光がゴールド製セッティングの光沢や、半透明で控えめな白と緑のエナメルによって引き立てられている。比較できる作品としては、1610年にサン・ドゥニで行われた壮麗な戴冠式でのマリー・ド・メディシスを画家フランス・プルビュス(息子)が描いた肖像画があるが、その中で彼女はたくさんのテーブルカットのダイヤモンドを身につけている。それらは同様のボックスベゼルにセットされており、中でも左手に着用したリングはヘルベルト・ティランダーによる決定版ともいえる研究書『歴史的ジュエリーに見るダイヤモンドのカット 1381-1910年』(1995年)109頁、図版188にも掲載されている。また、素晴らしいクロスについては「ダイヤモンドはそれぞれ隣接しておりほとんど見えない箱型の台座にセットされている」と言及されている。

同様に、B.ボレルによる『フランス王家の宝石』(1988年)、128頁には戴冠式の肖像画があり、「そこに忠実に描かれた宝石が示しているのは、石がフラットな台座にマウントされるという新しいセッティング方法であり、そこにはワイヤー・エッジもエナメルもチェイシングも、いかなるディテールもなく、ただダイヤモンドが際立っている」と説明がある。

大きなテーブルカットのダイヤモンドをセットしたリングは女王の素晴らしい装いを完璧なものに仕上げている。彼女の指から放たれるのは王家の栄光であり、それは金色のフルール・ド・リスが刺繍され数多くのパールやダイヤモンドが散りばめられた豪華で荘厳な紫のベルベット製マントにも表現されている。その時代から今に伝わるこのリングにはマリー・ド・メディシスが当時のジュエリーデザインに与えた影響、そしてジュエリーこそが王家の権威を主張するものであるという彼女の解釈が見られる。

ダイアナ・スカリスブリック